SSブログ

ミュンヘン・オペラ グルベローヴァ「ルクレツィア・ボルジア」 [オペラ(海外)]

Lucrezia Borgia
Opera • Gaetano Donizetti
Sung in Italian with German surtitles

Nationaltheater

Cast

Musikalische Leitung Paolo Arrivabeni
Regie Christof Loy
Bühne Henrik Ahr
Kostüme Barbara Drosihn
Licht Joachim Klein
Choreographische Mitarbeit Thomas Wilhelm
Dramaturgie Andrea Schönhofer
Yvonne Gebauer
Chor Stellario Fagone

Don Alfonso John Relyea
Donna Lucrezia Borgia Edita Gruberova
Gennaro Pavol Breslik
Maffio Orsini Silvia Tro Santafé
Jeppo Liverotto Joshua Stewart
Don Apostolo Gazella Christian Rieger
Ascanio Petrucci Andrea Borghini
Oloferno Vitellozzo Matthew Grills
Gubetta Goran Jurić
Rustighello Dean Power
Astolfo Tareq Nazmi

Bayerisches Staatsorchester
The Chorus of Bayerische Staatsoper

******

DSC08844 (480x640).jpg


2012年秋のウィーン国立歌劇場の来日公演「アンナ・ボレーナ」が、グルベローヴァの聴き納めと思っておりましたが、まだ諦めきれず、夏休みを利用してミュンヘンに行ってきました。

これに先立つ5月、グルベローヴァが足を骨折し、ウィーンでの「ノルマ」を全公演キャンセルしたとのニュースを聞いた時には、ミュンヘンもダメかもしれない・・・と意気消沈しましたが、幸い6月末のチューリッヒから復活した模様。
そしてミュンヘンでは、そんなアクシデントがあったことを全く感じさせない迫真のルクレツィアを歌い、本当に素晴らしかったです。

清澄な美しい歌声は本当に神様からの贈り物。
ソプラノ好きな私にとっては、世界一美しい歌声に思え、透明な美声を聞けるだけで幸せでした。
その上、驚異のテクニックと感情細やかな表現力は圧巻。
時折、目に涙を浮かべてながら歌っているのか、グルベローヴァの目の光と迫真の演技に心揺さぶられました。
フィナーレの「この若者は私の息子でした」の感情表現豊かな歌声にはただただ涙。
お年を召されたとはいえ、女王グルベローヴァはまだまだ健在です。

共演のジェンナーロを歌った若手テノール、Pavol Breslikもとても良かったです。

ロベルト・デヴリューと同じく、クリストフ・ロイの演出はところどころ不可解。
でもグルベローヴァが歌ってくれるのなら、演出なんてどうでもよいので、深く考えないことにし、グルベローヴァの一挙手一投足を追い続けました。

大熱演のルクレツィア終演後のカーテンコールでは、グルベローヴァのバイエルン国立歌劇場出演40周年記念を祝うサプライズの式典も!
Intendantの Nikolaus Bachler氏と Kunstministerの Ludwig Spaenle氏がステージに登場し、グルベローヴァに花束と記念品を贈呈。
グルベローヴァもスピーチで喜びを語っていました。

(バイエルン国立歌劇場のFBの写真より)

4.png


5.png


こちらに写真がいろいろと出ています。

https://www.facebook.com/media/set/?set=a.10152568550903794.1073741913.180609043793&type=3

プログラムに挟み込まれていたリーフレットによると、グルベローヴァは1974年11月23日にバイエルン国立歌劇場に夜の女王でデビュー。
その後の40年間でバイエルンでは285演目に出演しているとか。
主だった役柄の出演回数と、写真が載っていました。

1978年10月30日プルミエ 「魔笛」の夜の女王 11回
1980年4月20日 プルミエ「後宮からの逃走」コンスタンツェ 18回
1984年12月12日プルミエ 「ナクソス島のアリアドネ」ツェルビネッタ 13回
1985年11月29日プルミエ 「マノン(マスネー)」 11回
1991年10月19日プルミエ 「ランメルモーアのルチア」 33回
1995年10月30日プルミエ 「アンナ・ボレーナ」 27回
2000年5月24日プルミエ 「清教徒」 エルヴィラ 26回
2004年1月19日プルミエ 「ロベルト・デヴリュー」エリザベッタ 41回
2006年1月21日プルミエ 「ノルマ」 28回
2009年2月25日プルミエ「ルクレツィア・ボルジア」 ルクレツィア 22回

「セビリアの理髪師」ロジーナ 28回
「ドン・ジョヴァンニ」 ドンナ・アンナ 10回
「椿姫」 ヴィオレッタ 5回
「ばらの騎士」ゾフィー2回
他コンサート等10公演。

バイエルンだけでもこれだけの多彩な演目を歌い、成功してきたグルベローヴァ。本当に素晴らしい歌手です。
私はオペラファンになったのが遅かったので、最近のごく一部しか見ておらず、悔やまれます。

カーテンコールでは、熱狂的な拍手の中、グルベローヴァは何度(10回近く?)も呼び戻され、30分位は大歓声が続きました。

DSC08970 (640x480).jpg


バイエルンで愛されたグルベローヴァの晴れある記念式典に同席できたことは、一生の良い思い出になりました。

グルベローヴァが歌い続けている限り、これからも応援していきたいと思います♪
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

ミュンヘン・オペラ・フェスティバル2014 トーマス・ハンプソン・リサイタル [オペラ(海外)]

Festival Song Recital Thomas Hampson
Lieder by Richard Strauss
Sunday, 27 July 2014   11.00 a.m.
Nationaltheater

Bariton Thomas Hampson
Piano Wolfram Rieger
Violine (Notturno) Yamei Yu

Richard Strauss(1864-1949) :

Himmelsboten
Heimliche Aufforderung
Freundliche Vision
Traum druch die Dammerung
Die Nacht
Mein Herz ist stumm, mein Herz ist kalt
Sehnsucht
Befreit
Morgen

(Pause)

Notturno
Vom Kunftigen Alter
Und dann nicht mehr
Im Sonnenschein
アンコール 3曲

*****

2年ぶりに訪れたミュンヘン・オペラ・フェスティバル。
まず最初に聴いたのは、トーマス・ハンプソンのリサイタル。
ハンプソンの歌声を聴くのは、昨年、ザルツブルクの「ドン・カルロ」以来です。

プログラムは、バイエルン国立歌劇場ゆかりのオールR.シュトラウスの歌曲。
ハンプソンは、ピアニストのリーガーと組んですでにCDも出しているだけあって、ハリのある歌声で情感豊かに歌い上げていた。
歌いながらため息をついたり、遠くを恋い焦がれるように見上げたりと表情豊かな歌唱。
リーガーのピアノも詩情豊かで美しい。

さすがにハンプソンも寄る年波には勝てず(人のことは言えませんが・・・)、
時折、楽譜を見て歌う時には眼鏡をかけていた。
鳴りやまぬ拍手にこたえて、アンコールは3曲。

DSC08841 (640x480).jpg


終演後、楽屋口の前を通ったら女性ファンでいっぱい。
見ていたら、ハンプソン(アメリカ人)は、ドイツ語もフランス語もとても流暢。
フランス人マダムとはフランス語で、ドイツ人とはドイツ語で、冗談を言いながら和気あいあいと会話をし、気軽にサインや写真撮影に応じていた。
堪能な語学力に感心。
ダンディーな容姿と気さくな人柄にも引き付けられました。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

大野和士指揮 リヨン歌劇場来日公演 「ホフマン物語」 [オペラ(国内)]

リヨン歌劇場来日公演 歌劇「ホフマン物語」
※全5幕、原語[フランス語]上演・日本語字幕付き

(2014年7月5日 オーチャードホール)

作曲:ジャック・オッフェンバック
台本:ジュール・バルビエ

演出・衣裳:ロラン・ペリー
演出協力:クリスチャン・ラット
衣裳協力:ジャン=ジャック・デルモット
台本構成/ドラマトゥルク:アガット・メリナン
舞台:シャンタル・トマ
照明:ジョエル・アダン
ビデオ:シャルル・カルコピーノ

指揮:大野和士(フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者)

キャスト:
ホフマン:ジョン・オズボーン
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ
ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア
ルーテル/クレスペル:ピーター・シドム
ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ
ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン
アントニアの母:マリー・ゴートロ

合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ
合唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団
管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団

*****

昨年8月の二期会、12月の新国立劇場に続いて、この1年で3回目の「ホフマン物語」。
最高に素晴らしい「ホフマン物語」を見ることができました!

昨年末の「大野和士が語る『ホフマン物語』の魅力」のレクチャーでは、「ホフマン物語」の歌には、「愛の讃歌」や「愛は二人のために」といったシャンソン、フォークソングに似ているものもあると、情熱的に語っていた大野さん。
それを実践したかのように、表現力豊かに、たっぷりと高らかに歌い上げた音楽や歌が続き、何度も胸を熱くさせられた。

リヨン歌劇場管弦楽団は、キレ良く、色彩感豊かなドラマティックな演奏。
歌手も役者かと思えるような芸達者な者もいて、フランス語の発音がとても音楽的で美しい。
合唱もよくそろった明晰な歌声で上手かった。

二期会、新国立劇場版ではオランピア、ジュリエッタ、アントニアの順だったけれど、今回はオランピア、アントニア、ジュリエッタの順番。
そしてその3人+ステッラの4人のヒロインをチョーフィが一人で歌い演じるというのが画期的。
ホフマンが過去に愛した3人の女性は一人という趣旨を演出したものとのことです。
人形、芸術家、娼婦、恋人を演じわけたチョーフィがまことに持ってお見事で、情感細やかな素晴らしい歌声を聴かせてくれました。

特に第3幕の「アントニアの幕」は圧巻。
大好きな「雉鳩は逃げた」の甘美なアリアに始まり、ロマンティックな二重唱、迫真の三重唱、フィナーレのアントニア絶命までの感動的な歌声と音楽の連続で、ドキドキさせられながらも歌声に酔いしれた。

第3幕の途中で召使フランツが「ダンスが好き・・・」と足を上げてコミカルに歌う場面では、何やら大野さんが頭の上に両手で何かを持ってボキボキと変な音を・・・?
なんと大野さんがペットボトルを潰して発した音でした!
幕間に指揮台の下を見たら2ℓのつぶれたペットボトルが転がっていました(笑)。

ホフマンを歌ったオズボーンは、昨年のザルツブルク音楽祭の「ノルマ」でも聴きましたが、その時は共演のバルトリに食われてか今一つ。
でも今回は終始、伸びやかな歌声と生き生きとした演技で、最初から最後まで聴かせてくれ、はまり役でした。
ミューズ役のロジェも暖かみのある美しい歌声。
リンドルフ役のアルバロも終始、迫力のある歌声で素晴らしく、その存在感に圧倒されました。

ロラン・ペリーの演出は、モダンかつスタイリッシュな暗めのホラーな舞台。
そう奇をてらわないシンプルな舞台なので、音楽と歌の邪魔にならず、登場人物の心中を際立たせていた。
第4幕の「ジュリエッタの幕」でも、通常の舟も運河もなく、暗いサロンに椅子が何客かあるだけのシンプルさ。
そしてジュリエッタがホフマンに殺される悲劇的なフィナーレは初めて見たような気がします。

全体的に壁面、床面と絶えず動く舞台装置でした。
オランピア役のチョーフィはクレーンの先の椅子に座って、空中を上下、左右に動きながら歌っていました。
まるで遊園地さながらの乗り物に乗っているかのようで、高速で上から下降しながら、よく酔わずに歌えるものかと感心しきり。
プログラムによると、9年前に初めて歌ったときは怖かったけれど、もう慣れたそうです(笑)。
またステージ上では大きなローラーのついた台座に乗って、左右に動き回っていました。
カーテンコールでもチョーフィはオランピアの衣装でこの台座に乗ってスーッと出てきたけれど、誰がどう操作しているのか?、最後までよくわからず、不思議な仕掛けでした。

そのチョーフィ、カーテンコールではノリノリで、自ら手拍子をしながら、観客の拍手を一つにまとめ上げたりをして、楽しい公演の締めを飾ってくれました。

TVカメラが入っていましたので、そのうちTVで放映されるかと思います。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ローマ歌劇場日本公演 「ナブッコ」 (6/1) [オペラ(国内)]

ローマ歌劇場「ナブッコ」
2014年6月1日(日)15:00開演/NHKホール

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「ナブッコ」全4部のオペラ
台本:テミストクレ・ソレーラ

指揮:リッカルド・ムーティ
演出・美術:ジャン=ポール・スカルピッタ
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ

ナブッコ:ルカ・サルシ
イズマエーレ:アントニオ・ポーリ
ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー
アビガイッレ:ラッファエッラ・アンジェレッティ
フェネーナ:ソニア・ガナッシ
祭司:ルーカ・ダッラミーコ
アブダッロ:サヴェリオ・フィオーレ
アンナ:スィムゲ・ビュユックエデス

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団

*****

昨年夏のザルツブルクでの「ナブッコ」とザッカーリア、フェネーナ、祭司、アブダッロ、アンナは同じ歌手が歌っていた。
ザルツブルクのアビガイッレはタチアナ・セルジャンだったけれど、急病でドタキャンし、新進気鋭の歌手に変更になってしまい聞きそびれておりました。
そして日本公演でやっと聴けると思っていたのにドタキャン。
家を出る時にHPで確認したときは、セルジャンの名前が予定キャスト表に記載されていたのに、ホールに着いてみれば、体調不良が回復せず、代役とのこと。
またもや振られました・・・

今回の演出は、新国立劇場のショッピングセンターを舞台にした変な演出の「ナブッコ」とは対極的に、背景以外はほとんど何もない演出。
何もなさすぎて初めて見る人には、場面が王宮なのか牢獄なのか、また宗教的な対立等も、歌手が歌い語るまではわからない状況なのでは・・・と逆に心配になってしまうくらいでした。

そんな何もない舞台で効果的な演出を見せてくれたのは、ムーティ指揮のダイナミックかつドラマティックな音楽。切れ味の良い、よく引き締まった演奏で素晴らしかったです。

ナブッコが頭を雷に打たれる場面も演出上は何もなかったけれど、奏でられた音楽の一撃はすさまじいこと。
ベル神の偶像もなく、劇的な偶像崩壊シーンもなかったのには拍子ぬけだったけれど、歌われる音楽からその状況がわかる演出。
音楽と言葉から劇的なストーリーがどんどん進行していった。

ナブッコ役のサルシや昨日に続いて連日出演のザッカーリア役のベロセルスキーが朗々たる歌声で聴かせてくれ、素晴らしかった。
アビガイッレ代役のアンジェレッティの歌声は綺麗だけれど、声量弱く、高音は絶叫調。
歌うだけで精一杯といったところで、表現力はまだこれからでしょうか。
残念ながらアビガイッレの凄味も怖さも哀れさもあまり感じられませんでした。
急な代役ですから仕方がありませんね。がんばって歌い切ったので敢闘賞といったところでしょうか。

合唱団は、終始、迫力のある歌声で大健闘。
有名な「行け、わが思いよ金色の翼に乗って」は情感豊かな素晴らしい大合唱で感動的。
もう一回、聴きたいくらいでしたけれど、ムーティはめったなことでアンコールはしないようです。
というのも、前日の「シモン」の時に購入した「リッカルド・ムーティ イタリアの心 ヴェルディの心を語る」によると、アンコールした思い出として、ムーティがスカラ座の音楽監督に任命された最初のシーズンのオープニングで、アンコール演奏が禁止されているスカラ座でこの曲をアンコールし、大論争を引き起こしたこと、また2011年にローマ歌劇場の公演で国の文化予算の削減に反対する意味でアンコール演奏を行ったことを挙げていました。
聴衆の盛り上がりだけではなく、こうした意義ある時しかアンコールをしないというムーティですから、通常の来日公演でやってもらうのは難しいだろうな~と思ってしまいます。

ナブッコが「ユダヤの神よ。祭壇も神殿も」と許しを請う場面とフェネーナの情感豊かな「ああ、天国は開かれた」と祈り捧げる場面も、感動的で心揺さぶられました。

最終日とあって、何度かのカーテンコール後、オーケストラの団員もステージに上がって、恒例の横断幕「公演大成功、おめでとうございます! マエストロ・ムーティありがとう! 皆さん、ありがとう!」sayonaraと共に、ローマ歌劇場公演も終了しました。
ヴェルディの音楽の素晴らしさをあらためて教えてくれたマエストロに心より感謝!
コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ローマ歌劇場日本公演 「シモン・ボッカネグラ」 (5/31) [オペラ(国内)]

ローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「シモン・ボッカネグラ」プロローグと第3幕のメロドラマ
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アッリゴ・ボーイト

指揮:リッカルド・ムーティ
演出:エイドリアン・ノーブル
美術:ダンテ・フェレッティ
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ

シモン・ボッカネグラ:ジョルジョ・ペテアン
マリア・ボッカネグラ(アメーリア):エレオノーラ・ブラット
ガブリエーレ・アドルノ:フランチェスコ・メーリ
ヤーコポ・フィエスコ:ドミトリー・ベロセルスキー
パオロ・アルビアーニ:マルコ・カリア
ピエトロ:ルーカ・ダッラミーコ
伝令:サヴェリオ・フィオーレ
侍女:スィムゲ・ビュユックエデス

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団

*****

2013年10月にオーチャードホールでのムーティ講演会『ムーティ、ヴェルディを語る』で語られたことがまさに実践されたようなムーティ指揮のローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」。
音楽と言葉が一体となったドラマティックな公演で、大変、素晴らしかった。

講演会の時、「ヴェルディのオペラは『言葉の劇場』と言うだけあって、言葉の一語一語に、そして音楽の一音一音に感情がこめられている」とムーティが語っていた通り、風の音、海の波音といった情景描写、また人間の喜怒哀楽、あらゆる感情表現が端的に音楽で表現された「シモン・ボッカネグラ」。

時には立ち上がって緻密に細かく指示を与えるムーティさんの理知的な指揮からは、渋く陰影のある音色、はたまた神の祝福を願う天上の音楽が奏でられたりと、終始、叙情的かつ格調高い演奏で素晴らしかった。

出演歌手のうちメーリ、ベロセルスキー、ダッラミーコ、フィオーレ、ビュユックエデスの5名は、2013年夏のザルツブルク音楽祭でのムーティ指揮ローマ歌劇場の「ナブッコ」にも出演していた歌手。
どの歌手もパワフルで情熱的な歌唱で上手い。
雄弁な音楽と共に迫力のある二重唱、三重唱が素晴らしく、何度も感動させられた。
特にシモンとアメーリアの二重唱や最終幕でのシモンとフィエスコが和解する二重唱は涙もの。

フリットリの降板にはがっかりさせられたが、蓋を開けてみれば、代役のエレオノーラ・ブラットも清楚な初々しさが役柄にあっていて素晴らしかった。
よく通る凛とした美しい歌声でフリットリとはまた違った魅力のある1982年生まれの若手歌手。
弱音も高音も美しく、またいつか聴いてみたいと思わせる歌手だった。

メーリの爽やかで伸びやかなテノールにも惚れ惚れ。

昨秋の講演会で変な演出を痛烈に批判していたムーティさんらしく、演出は古風な品の良いもの。
三越デパートにあるようなライオン像まであった。
昨今の前衛的な変な演出が嫌いな私にとっては、大満足の演出。
音楽と歌手が素晴らしければ、今回のように演出はそれを邪魔しない程度のもので十分です。

最終幕フィナーレで最後の一音が鳴り止むと同時に、ブラボーの歓声が飛んだのはちょっと残念。
せめてムーティがまだ腕を挙げている間は、もう少しシモンの死を悼みながら悲しみの余韻を味わいたかった。

それ以外は大変、素晴らしい公演で大満足です。
コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

東京春祭ワーグナー・シリーズ 序夜《ラインの黄金》 [オペラ(国内)]

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.5『ニーベルングの指環』  (2014/4/5)
序夜《ラインの黄金》(演奏会形式・字幕映像付)

指揮:マレク・ヤノフスキ

ヴォータン:エギルス・シリンス
ドンナー:ボアズ・ダニエル
フロー:マリウス・ヴラド・ブドイウ
ローゲ:アーノルド・ベズイエン
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ミーメ:ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケ
ファーゾルト:フランク・ヴァン・ホーヴ
ファーフナー:シム・インスン
フリッカ:クラウディア・マーンケ
フライア:藤谷佳奈枝
エルダ:エリーザベト・クールマン
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香

管弦楽:NHK交響楽団

曲目
ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指環』序夜《ラインの黄金》
(全1幕/ドイツ語上演)※上演時間:2時間30分

*****

ヤノフスキ指揮のN響、素晴らしかった。
丁寧な手堅い演奏ながら、ドイツのオケも顔負けの重厚なハーモニーを奏でていて聴かせてくれた。
特に厚みのある低音のハーモニーが素晴らしい。

コンマスは外国人。
時折、N響に登場するゲストコンマスかしら~?と思ってよく見たら、なんとウィーン・フィルのコンマス、キュッヒルさんだった!
コンマスソロも艶やかでさすがの音色。

外国人歌手も皆、良かった。
特にアルべリヒ役のコニエチュニーさんは、演奏会形式で立ち位置は決まっているけれど、手振り、顔の表情も豊かで大熱演。
アルベリヒだけではなく、ローゲ、ミーメといった悪役歌手が皆、達者でこなれた演技力と歌声で目を見張らされた。

そして更にサプライズが!
本日のお席は、オーケストラ全体が見渡せるよう2階R側の最前列にしてみた。
最終場で何やら近くのドアで出入りがあったような気配が・・・なんて思っていたら、ヤノフスキさんがこちら側を振り向いて大きく合図をしている。ステージ上の歌手もこちらを見上げている。
なんとすぐ近くの左側通路から歌声が・・・エルダ役のクールマンが近くに立って歌っていた!
地底に居るエルダが2階から登場するとは思わなかった。
それもこんな間近で歌ってくれるとは!
高音も低音も素晴らしい深みのある歌声がビンビン響いてきてドキドキさせられた。
おまけに横顔も立ち姿も美しいことこのうえなし。
ステージ上のN響の壮麗なハーモニーにあわせて歌うクールマンはまさに神の歌声のようで目と耳の両方で魅了された。

思いもよらぬ2つのサプライズまであった「ラインの黄金」。
来年の「ワルキューレ」(2015年4月4日(土)と4月7日(火))も今から楽しみです[るんるん]
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ザルツブルク音楽祭2013 「ノルマ」 [オペラ(海外)]

Vincenzo Bellini : Norma
Haus fur Mozart

LEADING TEAM
Giovanni Antonini, Musikalische Leitung
Moshe Leiser, Patrice Caurier, Regie

BESETZUNG
Cecilia Bartoli, Norma
Rebeca Olvera, Adalgisa
John Osborn, Pollione
Michele Pertusi, Oroveso
Liliana Nikiteanu, Clotilde
Reinaldo Macias, Flavio
Coro della Radiotelevisione Svizzera
Orchestra La Scintilla

*****

9163692_1997085155_14large (480x640).jpg


8/30(金)19:30~22:40

チェチーリア・バルトリが歌う「ノルマ」最終日。
こちらも「ドン・カルロ」に次いで、早々に全日程が完売になった人気公演。
バルトリはザルツブルク聖霊降臨祭の芸術監督も務めているので大人気。

オケはラ・シンティッラ管弦楽団というチューリッヒ歌劇場母体の古楽器オーケストラ。
溌剌とした躍動感あるピリオド奏法。

演出はローマ時代ではなく、ナチス圧政下の戦時中という現代読み替え版。
3年前に同じザルツブルクで観たグルヴェローヴァのロマンティックなノルマとは違って、何やら暗く地味で、過激な演出。
巫女でもなく、信仰も神聖さもないので、歌詞と合わない場面が多々あり。

それでもバルトリの心情豊かな歌声は心に沁みる。
泣いたり、笑ったりと巧みな表現力。
ピアニッシモからフォルテッシモまでの幅広い強弱、凄味のある低音から高音までの明晰で滑らかな歌唱といい、ものすごくハイレベル、ハイパワーの歌唱で圧倒される。

ポリオーネ役オズボーンは平板な歌唱。時折、ビブラートが気になる。

アダルジーザ役のOlveraは美しい透明な歌声。ただバルトリと一緒に歌うと、線が細く、表現力が稚拙に聴こえる。

フィナーレは、ステージから本物の火がゴォッと上がって、ノルマとポリオーネは焼死。
その後もしばらく煙かった。

演出は好みではなかったけれど、バルトリのノルマが聴けたのは忘れ難い思い出。

9163692_1997085151_73large (640x480).jpg


来年は、聖霊降臨祭、夏の音楽祭共に、バルトリがロッシーニの「チェネレントラ」を歌う案内が出ていた。
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ザルツブルク音楽祭2013 ローマ歌劇場「ナブッコ」 [オペラ(海外)]

Giuseppe Verdi : Nabucco
Groses Festspielhaus

LEADING TEAM
Riccardo Muti, Musikalische Leitung

BESETZUNG
Zeljko Lucic, Nabucco
Dmitry Belosselskiy, Zaccaria
Anna Pirozzi, Abigaille
Francesco Meli, Ismaele
Sonia Ganassi, Fenena
Saverio Fiore, Abdallo
Simge Buyukedes, Anna
Luca Dall’Amico, Il Gran Sacerdote

Orchestra e Coro del Teatro dell'Opera di Roma

******
8/29(木) 21:00~0:00頃

ムーティ指揮ローマ歌劇場管弦楽団の「ナブッコ」(演奏会形式)。

オーケストラはド派手なゴージャス感ある演奏。
ですが指揮者がムーティさんとあって、キレ良く、キリッと引き締まっている。
旧き良きイタリアを感じさせるレトロで豪華な音色。

ひときわ甲高い音色をピッコロを奏でるオジサンが、上下左右と激しく動いているのが面白く、笑いがこみあげてきた。
オケ全体がのびのびと自由に演奏している。
さすがは感情表現が巧みなイタリアのオケだと感心!

アビガイッレ役は、Tatiana Serjanが急病のためキャンセル。
急遽、ナポリ出身の若手歌手Pirozziが代役。
2007年頃から歌劇場で歌っている歌手らしい。
迫力のあるドラマティクな歌声で、立派な歌唱。
ただ他の歌手が譜面なしで歌っている中、一人、譜面を見て歌っているので、やはり表現力的に代役であることは否めない。

オーケストラの後ろの合唱団の前、中央には、合唱指揮者のGabbianiさんが座って、スコアをめくっていらした。
合唱団は迫力のある綺麗な歌声。
「黄金の翼に乗って」は繰り返しなしの1回のみだった。

コンサート形式なので、歌手は、オケの前の椅子に座り、出番が来ると、立ち上がってその場で歌うだけ。
オペラというよりも、あくまで歌声と音楽を楽しむコンサート。

ナブッコ役ルチッチさんは、ヴェルディオペラ26作品中22作品を歌っているという朗々たるヴェルディ・バリトン。
フェネーナ役ガナッシさんは線は細いが美しい歌声。

2014年のローマ歌劇場日本公演の「ナブッコ」にも、同じく、ベロセルスキー(ザッカーリア役)、セルジャン(アビガイッレ役)、ソニア・ガナッシ(フェネーナ役)が出演する。

9163692_1996751759_98large (640x480).jpg

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ザルツブルク音楽祭2013 ファン・ディエゴ・フローレス リサイタル [コンサート(海外)]

Liederabend Juan Diego Florez
Haus fur Mozart

PROGRAMM
STEFANO DONAUDY : O del mio amato ben Nr. 18 aus 36 Arie di Stile Antico (1918)
STEFANO DONAUDY : Quand'il tuo diavol nacque Nr. 19 aus 36 Arie di Stile Antico (1918)
STEFANO DONAUDY : Vaghissima sembianza Nr. 14 aus 36 Arie di Stile Antico (1918)

GEORG FRIEDRICH HANDEL : Arie des Jupiter: Where'er you walk aus Semele HWV 58 (1743)
GEORG FRIEDRICH HANDEL : Arie des Jupiter: I must with speed amuse her aus Semele HWV 58 (1743)

GIACOMO MEYERBEER : Romance des Raoul: Plus blanche que la blanche hermine aus Les huguenots (1836)

GIUSEPPE VERDI : Arie des Gaston: Je veux encore entendre ta voix aus Jerusalem (1847)

FRANCESCO PAOLO TOSTI : Ideale (1882)
FRANCESCO PAOLO TOSTI : Vorrei morire (1878)
FRANCESCO PAOLO TOSTI : Parted (1900:1903)
FRANCESCO PAOLO TOSTI : L'alba separa dalla luce l'ombra (1907)

PABLO LUNA : Paxarin tu que vuelas aus La picara molinera (1928)

JACINTO GUERRERO : Flor roja aus Los gavilanes (1923)

JOSE SERRANO : Jota aus El trust de los tenorios (1910)

GAETANO DONIZETTI : Arie des Roberto: Come uno spirtoangelico aus Roberto Devereux (1837)

(アンコール) 6曲くらい

INTERPRETEN
Juan Diego Florez, Tenor
Vincenzo Scalera, Klavier

*****

8/29(木)18:00~20:10頃

フローレスの「歌曲の夕べ」。
こちらも早々に売り切れになった人気公演。
幸運なことに1階最前列で聴くことができました。

第1曲目からフローレスの素晴らしい歌声に大興奮!
抜けるような輝かしい高音、長い息のフレージング、明晰に転がしたアジリタ等、難度の高い驚異のテクニックもものともせず、さらりと余裕で歌い上げてしまう。
そのうえ表現力豊かな情熱的な歌声で、聴いている方もテンションが上がってしまいます。

歌の素晴らしさだけではなく、とにかく楽しいリサイタルでした。
たとえばある曲を情熱的に歌っていたフローレスの歌声が、フィナーレ直前に突然、ピアノと共にストップ。 固唾をのんでフローレスが発する最高音を待ち構えていた観客に向かって、茶目っ気たっぷりに指を振って「もう少し待つんだよ~!」と言わんばかりに指を振ってじらした後に、息の長い、輝かしい最高音を発しての見事なエンディング。
熱狂的な拍手喝采が起こりました。

こうしてフローレスが1曲歌うたびに、観客全体がどんどん、沸きに沸き、フローレスと観客が一体となって盛り上がった素晴らしい公演。

アンコールも6曲くらい歌ってくれ、1曲、歌い終わる毎に、スタンディング・オベーションの大きな拍手が何度も続き、更なる盛り上がりで終わり知らず。

フローレスがアンコールの曲名を告げる前に、「ロッシーニ」とリクエストをする観客がいたり、期待していた曲名とは違ってがっかりする人がいると、フローレスが「これも良い曲だよ!」と言って歌い始めたりと、フローレスと観客との相互のやり取りがこれまた楽しい。

何曲目かのアンコールで「マライア」(?)とかいう曲を歌った後、ふと客席後ろを振り返ると、ザルツブルク音楽祭のペレイラ芸術総監督が一人、立ち上がって大喜びで拍手をしていらした。
どうやらマライアをペレイラに引っ掛けて歌っていたのかな~?

アンコール最後の方には待望の「連帯の娘」も!
これぞ世界一の最高のテノールと思えるべき、輝かしく、突き抜けるようなハイCの連発で圧巻。
そしてアンコールの締めは「リゴレット」の「女心の歌」。

9163692_1996435262_182large (480x640).jpg


楽しく素晴らしいフローレスのリサイタルを堪能できて、ザルツブルクに来た甲斐がありました。
今回の音楽祭で一番、感動し、忘れ難い公演となりました!
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

ザルツブルク音楽祭2013 ハーゲン・クァルテット(8/28) [コンサート(海外)]

Hagen Quartett,
Beethoven-Zyklus 6
28. August, 19:30 Uhr, Mozarteum

PROGRAMM
LUDWIG V. BEETHOVEN ‎• Streichquartett Nr. 9 C-Dur op. 59/3, "Rasumowsky"
LUDWIG V. BEETHOVEN ‎• Streichquartett Nr. 13 B-Dur op. 130 und Große Fuge B-Dur op. 133

INTERPRETEN
Hagen Quartett,
Lukas Hagen, Violine
Rainer Schmidt, Violine
Veronika Hagen, Viola
Clemens Hagen, Violoncello

本拠地モーツァルテウムで聴くハーゲン・クァルテットの演奏は圧巻。
ものすごく速いパッセージでも乱れずに息のあった演奏に感服。
音響がよく、見やすいモーツァルテウムで名演を堪能できました。

9163692_1995946274_247large (640x480).jpg


モーツァルテウムは、ドイツ・アールヌーボーであるユーゲントシュティール風装飾が美しいホールです。

9163692_1995946280_79large (640x480).jpg


9163692_1995946278_119large (640x480).jpg


今回は夜の公演でしたので見損ないましたが、庭園には「魔笛小屋」(モーツァルトが「魔笛」を作曲した小屋)が移築されております。

9163692_552069574_106large (640x480).jpg



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。