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東京春祭 歌曲シリーズ vol.16 [オペラ(国内)]

東京春祭 歌曲シリーズ vol.16
エリーザベト・クールマン(メゾ・ソプラノ)〜愛と死をうたう

■出演
メゾ・ソプラノ:エリーザベト・クールマン
ピアノ:エドゥアルド・クトロヴァッツ

■曲目
リスト:
 私の歌は毒されている S289
 昔、テューレに王がいた S278

ワーグナー:
 《ヴェーゼンドンク歌曲集》 より
  温室にて
  悩み
  夢
 エルダの警告~逃れよ、ヴォータン(舞台祝祭劇《ラインの黄金》 より)

リスト:
 私は死んだ (《愛の夢》第2番 S541-2 ) (ピアノ・ソロ)

グルック:
 ああ、われエウリディーチェを失えり
 (歌劇《オルフェウスとエウリディーチェ》 より)

〜〜〜休 憩〜〜〜

リスト:
 愛し合うことは素晴らしいことだろう S314

シューマン:
 彼に会ってから (《女の愛と生涯》 op.42 より)

リスト:
 われ汝を愛す S315

シューマン:
 私にはわからない、信じられない (《女の愛と生涯》 op.42 より)
 満足 (《子供の情景》 op.15 より)(ピアノ・ソロ)
 やさしい友よ、あなたは見つめる (《女の愛と生涯》 op.42 より)
 私の心に、私の胸に (《女の愛と生涯》 op.42 より)

シューベルト:
 子守歌 D.498

シューマン:
 あなたは初めての悲しみを私に与えた (《女の愛と生涯》 op.42 より)

シューベルト:
 夜の曲 D.672
 死と乙女 D.531
 精霊の踊り D.116
 小人 D.771

(アンコール)
リスト:3人のジプシー
日本歌曲:さくらさくら (三ツ石潤司 編曲)
リスト:愛とは?

*******

先週、「ワルキューレ」で怖いフリッカを見事に歌ったクールマンのリサイタル。
表現力豊かな美声の歌声で、素晴らしかった。

歌心にあふれた美しいドイツ語の発音、声量豊かな深みのある、清んだ美しい歌声に終始、魅了された。
高音から低音までの声域も広く、あたかも身体にPAが埋め込まれてでもいるかのような豊かな響きの歌声。
力むことなく強音も弱音も美しくたっぷりと歌い上げる。
多彩な表現力の歌唱で熱演。
歌詞が理解できなくても、クールマンの歌声と表情で、喜びも悲しみも伝わってくる。
恋する乙女、母、畏敬の女神、傷心の夫、孤独な寡婦、死神、精霊・・・と、ズボン役も女役も演じ歌える華ある歌手。
一瞬たりとも飽きさせないプログラムだった。

ワーグナーの「エルダの警告」は圧巻。
鳥肌が立つような神秘的な歌声でまさに神の歌声。
昨年の春祭「ラインの黄金」でも2階R側に登場したクールマンが、真横で歌った時には、畏怖の歌声にドキドキさせられ、感動させられた。

グルックの「ああ、われエウリディーチェを失えり」の最後の傷心の表情のクールマンにも心揺さぶられた。

アンコールの「さくらさくら」は、美しい日本語で雅な雰囲気。
歌い終わったクールマンが会場で座って聴いていらした編曲者に手を差し伸べて紹介していた。

当初は全曲、休憩なしで歌う予定だったようで、プログラムの冒頭には「芸術的な観点から、本日の公演は、休憩なしで演奏いたします。またプログラムを一つの流れとしてお楽しみいただきたいという出演者の意向により、最後まで拍手はお控え下さい・・・」と書かれていた。
が、開演前の放送で、「リハーサルの結果、休憩を入れることになりました」とプログラム進行が変わった。
当初は休憩なしで全曲、歌うつもりだったという驚異的なスタミナに感心しきり。

クールマンの歌声を初めて聴いたのは、新国立劇場の2009年1月公演「こうもり」のオルロフスキー公爵。男装の麗人の美声に魅せられた。

続いて2010年8月のザルツブルク音楽祭で、ムーティ指揮のグルックの「オルフェオとエウリディーチェ」のオルフェオ役。美しいオルフェオに感動。

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2012年10月〜11月のウィーン国立歌劇場の来日公演「アンナ ボレーナ」ではスメトン役。
グルベローヴァ目当てで2回、観に行ったけれど、クールマンも素晴らしかった。

そして2014年4月「ラインの黄金」のエルダ、2015年4月「ワルキューレ」のフリッカと、華ある女神の美声に魅了された。

本日はTVカメラが入っていました。
2015年6月25日(木)AM5:00〜のNHK BS「クラシック倶楽部」で放映されるそうです。

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東京春祭ワーグナー・シリーズ 《ワルキューレ》 (4/4) [オペラ(国内)]

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.6『ニーベルングの指環』第1日《ワルキューレ》
(演奏会形式/字幕・映像付)

■出演
指揮:マレク・ヤノフスキ

ジークムント:ロバート・ディーン・スミス
フンディング:シム・インスン
ヴォ―タン:エギルス・シリンス
ジークリンデ:ワルトラウト・マイヤー
ブリュンヒルデ:キャサリン・フォスター
フリッカ:エリーザベト・クールマン
ヘルムヴィーゲ:佐藤路子
ゲルヒルデ:小川里美
オルトリンデ:藤谷佳奈枝
ヴァルトラウテ:秋本悠希
ジークルーネ:小林紗季子
ロスヴァイセ:山下未紗
グリムゲルデ:塩崎めぐみ
シュヴェルトライテ:金子美香

管弦楽:NHK交響楽団 (ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

■曲目
ワーグナー:舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』第1日《ワルキューレ》
(全3幕/ドイツ語上演/字幕・映像付) ※ 上演時間:約4時間50分(休憩2回含む)

*******

ヤノフスキ指揮、N響の「ワルキューレ」。
昨年に続き、ゲストコンサートマスターがキュッヒルさんのうえ、歌手もバイロイト歌手をはじめとする大変、豪華な顔ぶれ。

フンディング役のインスン氏だけは譜面台が用意されていたが、その他は、歌い慣れているのか暗譜で、表情豊かな熱演の歌声で、最後まで息もつかせぬ素晴らしさだった!

贅沢な歌手陣が勢ぞろいした中、ひときわ輝いていたのは、マイヤーさんの圧巻の歌唱と演技。
第一声から美しいドイツ語と表情豊かな歌声に惚れ惚れ。
迫真の歌声に何度も心揺さぶられ、感動させられた。
当初のキャスト変更による代役でしたが、本当に嬉しい代役!!
よくぞ日本に来て歌ってくれたことと、ただただ感謝と感動を憶えた。

昨年はエルダで美声を聴かせてくれたクールマン、今年は恐妻フリッカを見事に歌い演じ、素晴らしかった。
オーストリア出身のクールマンも美しいドイツ語と表現力のある歌唱で感服。

ディーン・スミス、キャサリン・フォスター、シリンスもさすがの充実した歌唱で、本当に贅沢な歌手が揃いもそろった公演で、素晴らしかった。

シンプルな映像のみのコンサート形式でしたが、キュッヒルさんをゲストコンサートマスターに迎えたN響はキレ良い、ドラマティックな演奏で雄弁に奏でていた。
ヤノフスキ指揮のウネリある迫力の豪壮感ある演奏に高揚感を憶え、ロマンティックな甘美なメロディに天にも昇る心持。

キュッヒルさんの気迫のこもったシャープな弓さばきがお見事。
上体を大きく揺らしてのキュッヒルさんにあおられてか、格調高い、深みのある壮麗なハーモニーをN響が一体となって奏でた素晴らしい演奏。

各幕終わるごとに、ゴッーと湧き起こる大歓声の嵐。
新国のオペラ公演でもこれほどの大歓声は聴いたことがない。
飯守さんも観に来られていた。

最終幕のエンディングでは、ヤノフスキさんの腕がまだ下されていないうちにごく一部で拍手が起こった。すぐに止んで、再度、静寂が戻ったが、ちょっと残念。

カーテンコールで一番の賛辞を受けていたのはマイヤーさんでした!
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サイトウ・キネン・フェスティバル松本 「ファルスタッフ」 [オペラ(国内)]

サイトウ・キネン・フェスティバル
ヴェルディ:オペラ「ファルスタッフ」
8月22日(金)開演19:00~

出演:
サー・ジョン・ファルスタッフ:クイン・ケルシー
フォード:マッシモ・カヴァレッティ
フェントン:パオロ・ファナーレ
アリーチェ・フォード:マイテ・アルベローラ
ナンネッタ:モーリーン・マッケイ
クイックリー夫人:ジェーン・ヘンシェル
メグ・ページ:ジェイミー・バートン
バルドルフォ:キース・ジェイムソン
ピストーラ:デイヴィッド・ソアー
ドクター・カイウス:ラウール・ヒメネズ
合唱:SKF松本合唱団

演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:ファビオ・ルイージ
演出:デイヴィッド・ニース
装置・衣裳:ロバート・ペルジオーラ
照明:リック・フィッシャー

******

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今年のサイトウ・キネンのオペラはファビオ・ルイージが指揮するということで松本へ行ってきました。

ルイージが指揮するオペラを観るのは、2011年のMET来日公演以来です。
ルイージの巧みな指揮のもと、スマートで格調高いヴェルディを堪能。
歌手もオーケストラもハイレベルで、どこかのイタリア歌劇場の来日公演かと思ってしまうほどでした。

サイトウ・キネン・オーケストラの演奏は初めて聴きましたが、日本のオーケストラとは思えないくらい上手いですね。
コンマスは矢部さん。その後ろには豊嶋さんのお姿も。
大音量の豪壮なメロディあり、ピアニッシモのロマンティックなメロディありと、終始、明晰、美音のハーモニーを奏で、ルイージの緻密なテンポの緩急にも乱れることの巧みな演奏に感心。

デイビッド・ニース演出の舞台は、予算はかかっていないけれど、オーソドックスなメルヘンな舞台。
下手にいじくりまわしていないのがこれまた好ましい。
第2幕のフォード家のキッチンには、ブルー&ホワイトのお皿がいっぱい並んだ英国カントリー調の大きな飾り戸棚が鎮座し、見ているだけで楽しく、素敵だった。

歌手は、皆、とても良かった。
ケルシーはファルスタッフ役は初挑戦だとか。
歌声は立派で良かったけれど、2013年のミラノ・スカラ座来日公演で、悪人だけれど愛すべきファルスタッフを演じたアンブロージョ・マエストリに比べると、まだ表情も演技も硬くて、時折、怒った姿が怖すぎる感。
演技と表情で笑いのツボをとるのはまだこれからでしょうか。

フォード役はスカラ座の時と同じく、マッシモ・カヴァレッティで、こなれた歌と演技も素晴らしかった。
第2幕の「これは夢か、 まことか」の大熱唱に、歌い終わる前から盛大な拍手が起こるほど。

アルベローラ、ヘンシェル、バートンの女性陣は、皆、とても良かった。
クイックリー夫人のヘンシェルは2010年5月の新国立劇場「影のない女」の乳母役でも聴いているが、脇役ながらも存在感のある歌手で面白い。

ナンネッタ役のマッケイは、2009年の小澤征爾音楽塾オペラ「ヘンゼルとグレーテル」で眠りの精と露の精を歌った歌手。
本当に可憐で、妖精役がよく似合う。
ファルスタッフでも最終幕は妖精の仮装。
高音が美しく、素敵な歌手です。

フェントンはスティーヴン・コステロの急遽の代役でファナーレ。
2013年の新国立劇場「コジ・ファン・トゥッテ」のフェルランド役を聴いている。
この方もさわやかな歌声と好印象のルックスで、こうした役柄がよく合っています。

歌手もオケも良かったけれど、でも今回の一番の功績はやはりルイージ。
ルイージが指揮するオペラを見られただけで、松本に行った甲斐がありました。

この日は、NHKのカメラが入り、録画しておりましたので、そのうちTVで放映されるかと思います。
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大野和士指揮 リヨン歌劇場来日公演 「ホフマン物語」 [オペラ(国内)]

リヨン歌劇場来日公演 歌劇「ホフマン物語」
※全5幕、原語[フランス語]上演・日本語字幕付き

(2014年7月5日 オーチャードホール)

作曲:ジャック・オッフェンバック
台本:ジュール・バルビエ

演出・衣裳:ロラン・ペリー
演出協力:クリスチャン・ラット
衣裳協力:ジャン=ジャック・デルモット
台本構成/ドラマトゥルク:アガット・メリナン
舞台:シャンタル・トマ
照明:ジョエル・アダン
ビデオ:シャルル・カルコピーノ

指揮:大野和士(フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者)

キャスト:
ホフマン:ジョン・オズボーン
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ
ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア
ルーテル/クレスペル:ピーター・シドム
ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ
ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン
アントニアの母:マリー・ゴートロ

合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ
合唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団
管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団

*****

昨年8月の二期会、12月の新国立劇場に続いて、この1年で3回目の「ホフマン物語」。
最高に素晴らしい「ホフマン物語」を見ることができました!

昨年末の「大野和士が語る『ホフマン物語』の魅力」のレクチャーでは、「ホフマン物語」の歌には、「愛の讃歌」や「愛は二人のために」といったシャンソン、フォークソングに似ているものもあると、情熱的に語っていた大野さん。
それを実践したかのように、表現力豊かに、たっぷりと高らかに歌い上げた音楽や歌が続き、何度も胸を熱くさせられた。

リヨン歌劇場管弦楽団は、キレ良く、色彩感豊かなドラマティックな演奏。
歌手も役者かと思えるような芸達者な者もいて、フランス語の発音がとても音楽的で美しい。
合唱もよくそろった明晰な歌声で上手かった。

二期会、新国立劇場版ではオランピア、ジュリエッタ、アントニアの順だったけれど、今回はオランピア、アントニア、ジュリエッタの順番。
そしてその3人+ステッラの4人のヒロインをチョーフィが一人で歌い演じるというのが画期的。
ホフマンが過去に愛した3人の女性は一人という趣旨を演出したものとのことです。
人形、芸術家、娼婦、恋人を演じわけたチョーフィがまことに持ってお見事で、情感細やかな素晴らしい歌声を聴かせてくれました。

特に第3幕の「アントニアの幕」は圧巻。
大好きな「雉鳩は逃げた」の甘美なアリアに始まり、ロマンティックな二重唱、迫真の三重唱、フィナーレのアントニア絶命までの感動的な歌声と音楽の連続で、ドキドキさせられながらも歌声に酔いしれた。

第3幕の途中で召使フランツが「ダンスが好き・・・」と足を上げてコミカルに歌う場面では、何やら大野さんが頭の上に両手で何かを持ってボキボキと変な音を・・・?
なんと大野さんがペットボトルを潰して発した音でした!
幕間に指揮台の下を見たら2ℓのつぶれたペットボトルが転がっていました(笑)。

ホフマンを歌ったオズボーンは、昨年のザルツブルク音楽祭の「ノルマ」でも聴きましたが、その時は共演のバルトリに食われてか今一つ。
でも今回は終始、伸びやかな歌声と生き生きとした演技で、最初から最後まで聴かせてくれ、はまり役でした。
ミューズ役のロジェも暖かみのある美しい歌声。
リンドルフ役のアルバロも終始、迫力のある歌声で素晴らしく、その存在感に圧倒されました。

ロラン・ペリーの演出は、モダンかつスタイリッシュな暗めのホラーな舞台。
そう奇をてらわないシンプルな舞台なので、音楽と歌の邪魔にならず、登場人物の心中を際立たせていた。
第4幕の「ジュリエッタの幕」でも、通常の舟も運河もなく、暗いサロンに椅子が何客かあるだけのシンプルさ。
そしてジュリエッタがホフマンに殺される悲劇的なフィナーレは初めて見たような気がします。

全体的に壁面、床面と絶えず動く舞台装置でした。
オランピア役のチョーフィはクレーンの先の椅子に座って、空中を上下、左右に動きながら歌っていました。
まるで遊園地さながらの乗り物に乗っているかのようで、高速で上から下降しながら、よく酔わずに歌えるものかと感心しきり。
プログラムによると、9年前に初めて歌ったときは怖かったけれど、もう慣れたそうです(笑)。
またステージ上では大きなローラーのついた台座に乗って、左右に動き回っていました。
カーテンコールでもチョーフィはオランピアの衣装でこの台座に乗ってスーッと出てきたけれど、誰がどう操作しているのか?、最後までよくわからず、不思議な仕掛けでした。

そのチョーフィ、カーテンコールではノリノリで、自ら手拍子をしながら、観客の拍手を一つにまとめ上げたりをして、楽しい公演の締めを飾ってくれました。

TVカメラが入っていましたので、そのうちTVで放映されるかと思います。
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ローマ歌劇場日本公演 「ナブッコ」 (6/1) [オペラ(国内)]

ローマ歌劇場「ナブッコ」
2014年6月1日(日)15:00開演/NHKホール

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「ナブッコ」全4部のオペラ
台本:テミストクレ・ソレーラ

指揮:リッカルド・ムーティ
演出・美術:ジャン=ポール・スカルピッタ
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ

ナブッコ:ルカ・サルシ
イズマエーレ:アントニオ・ポーリ
ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー
アビガイッレ:ラッファエッラ・アンジェレッティ
フェネーナ:ソニア・ガナッシ
祭司:ルーカ・ダッラミーコ
アブダッロ:サヴェリオ・フィオーレ
アンナ:スィムゲ・ビュユックエデス

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団

*****

昨年夏のザルツブルクでの「ナブッコ」とザッカーリア、フェネーナ、祭司、アブダッロ、アンナは同じ歌手が歌っていた。
ザルツブルクのアビガイッレはタチアナ・セルジャンだったけれど、急病でドタキャンし、新進気鋭の歌手に変更になってしまい聞きそびれておりました。
そして日本公演でやっと聴けると思っていたのにドタキャン。
家を出る時にHPで確認したときは、セルジャンの名前が予定キャスト表に記載されていたのに、ホールに着いてみれば、体調不良が回復せず、代役とのこと。
またもや振られました・・・

今回の演出は、新国立劇場のショッピングセンターを舞台にした変な演出の「ナブッコ」とは対極的に、背景以外はほとんど何もない演出。
何もなさすぎて初めて見る人には、場面が王宮なのか牢獄なのか、また宗教的な対立等も、歌手が歌い語るまではわからない状況なのでは・・・と逆に心配になってしまうくらいでした。

そんな何もない舞台で効果的な演出を見せてくれたのは、ムーティ指揮のダイナミックかつドラマティックな音楽。切れ味の良い、よく引き締まった演奏で素晴らしかったです。

ナブッコが頭を雷に打たれる場面も演出上は何もなかったけれど、奏でられた音楽の一撃はすさまじいこと。
ベル神の偶像もなく、劇的な偶像崩壊シーンもなかったのには拍子ぬけだったけれど、歌われる音楽からその状況がわかる演出。
音楽と言葉から劇的なストーリーがどんどん進行していった。

ナブッコ役のサルシや昨日に続いて連日出演のザッカーリア役のベロセルスキーが朗々たる歌声で聴かせてくれ、素晴らしかった。
アビガイッレ代役のアンジェレッティの歌声は綺麗だけれど、声量弱く、高音は絶叫調。
歌うだけで精一杯といったところで、表現力はまだこれからでしょうか。
残念ながらアビガイッレの凄味も怖さも哀れさもあまり感じられませんでした。
急な代役ですから仕方がありませんね。がんばって歌い切ったので敢闘賞といったところでしょうか。

合唱団は、終始、迫力のある歌声で大健闘。
有名な「行け、わが思いよ金色の翼に乗って」は情感豊かな素晴らしい大合唱で感動的。
もう一回、聴きたいくらいでしたけれど、ムーティはめったなことでアンコールはしないようです。
というのも、前日の「シモン」の時に購入した「リッカルド・ムーティ イタリアの心 ヴェルディの心を語る」によると、アンコールした思い出として、ムーティがスカラ座の音楽監督に任命された最初のシーズンのオープニングで、アンコール演奏が禁止されているスカラ座でこの曲をアンコールし、大論争を引き起こしたこと、また2011年にローマ歌劇場の公演で国の文化予算の削減に反対する意味でアンコール演奏を行ったことを挙げていました。
聴衆の盛り上がりだけではなく、こうした意義ある時しかアンコールをしないというムーティですから、通常の来日公演でやってもらうのは難しいだろうな~と思ってしまいます。

ナブッコが「ユダヤの神よ。祭壇も神殿も」と許しを請う場面とフェネーナの情感豊かな「ああ、天国は開かれた」と祈り捧げる場面も、感動的で心揺さぶられました。

最終日とあって、何度かのカーテンコール後、オーケストラの団員もステージに上がって、恒例の横断幕「公演大成功、おめでとうございます! マエストロ・ムーティありがとう! 皆さん、ありがとう!」sayonaraと共に、ローマ歌劇場公演も終了しました。
ヴェルディの音楽の素晴らしさをあらためて教えてくれたマエストロに心より感謝!
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ローマ歌劇場日本公演 「シモン・ボッカネグラ」 (5/31) [オペラ(国内)]

ローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「シモン・ボッカネグラ」プロローグと第3幕のメロドラマ
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アッリゴ・ボーイト

指揮:リッカルド・ムーティ
演出:エイドリアン・ノーブル
美術:ダンテ・フェレッティ
衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ

シモン・ボッカネグラ:ジョルジョ・ペテアン
マリア・ボッカネグラ(アメーリア):エレオノーラ・ブラット
ガブリエーレ・アドルノ:フランチェスコ・メーリ
ヤーコポ・フィエスコ:ドミトリー・ベロセルスキー
パオロ・アルビアーニ:マルコ・カリア
ピエトロ:ルーカ・ダッラミーコ
伝令:サヴェリオ・フィオーレ
侍女:スィムゲ・ビュユックエデス

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団

*****

2013年10月にオーチャードホールでのムーティ講演会『ムーティ、ヴェルディを語る』で語られたことがまさに実践されたようなムーティ指揮のローマ歌劇場「シモン・ボッカネグラ」。
音楽と言葉が一体となったドラマティックな公演で、大変、素晴らしかった。

講演会の時、「ヴェルディのオペラは『言葉の劇場』と言うだけあって、言葉の一語一語に、そして音楽の一音一音に感情がこめられている」とムーティが語っていた通り、風の音、海の波音といった情景描写、また人間の喜怒哀楽、あらゆる感情表現が端的に音楽で表現された「シモン・ボッカネグラ」。

時には立ち上がって緻密に細かく指示を与えるムーティさんの理知的な指揮からは、渋く陰影のある音色、はたまた神の祝福を願う天上の音楽が奏でられたりと、終始、叙情的かつ格調高い演奏で素晴らしかった。

出演歌手のうちメーリ、ベロセルスキー、ダッラミーコ、フィオーレ、ビュユックエデスの5名は、2013年夏のザルツブルク音楽祭でのムーティ指揮ローマ歌劇場の「ナブッコ」にも出演していた歌手。
どの歌手もパワフルで情熱的な歌唱で上手い。
雄弁な音楽と共に迫力のある二重唱、三重唱が素晴らしく、何度も感動させられた。
特にシモンとアメーリアの二重唱や最終幕でのシモンとフィエスコが和解する二重唱は涙もの。

フリットリの降板にはがっかりさせられたが、蓋を開けてみれば、代役のエレオノーラ・ブラットも清楚な初々しさが役柄にあっていて素晴らしかった。
よく通る凛とした美しい歌声でフリットリとはまた違った魅力のある1982年生まれの若手歌手。
弱音も高音も美しく、またいつか聴いてみたいと思わせる歌手だった。

メーリの爽やかで伸びやかなテノールにも惚れ惚れ。

昨秋の講演会で変な演出を痛烈に批判していたムーティさんらしく、演出は古風な品の良いもの。
三越デパートにあるようなライオン像まであった。
昨今の前衛的な変な演出が嫌いな私にとっては、大満足の演出。
音楽と歌手が素晴らしければ、今回のように演出はそれを邪魔しない程度のもので十分です。

最終幕フィナーレで最後の一音が鳴り止むと同時に、ブラボーの歓声が飛んだのはちょっと残念。
せめてムーティがまだ腕を挙げている間は、もう少しシモンの死を悼みながら悲しみの余韻を味わいたかった。

それ以外は大変、素晴らしい公演で大満足です。
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東京春祭ワーグナー・シリーズ 序夜《ラインの黄金》 [オペラ(国内)]

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.5『ニーベルングの指環』  (2014/4/5)
序夜《ラインの黄金》(演奏会形式・字幕映像付)

指揮:マレク・ヤノフスキ

ヴォータン:エギルス・シリンス
ドンナー:ボアズ・ダニエル
フロー:マリウス・ヴラド・ブドイウ
ローゲ:アーノルド・ベズイエン
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ミーメ:ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケ
ファーゾルト:フランク・ヴァン・ホーヴ
ファーフナー:シム・インスン
フリッカ:クラウディア・マーンケ
フライア:藤谷佳奈枝
エルダ:エリーザベト・クールマン
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香

管弦楽:NHK交響楽団

曲目
ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指環』序夜《ラインの黄金》
(全1幕/ドイツ語上演)※上演時間:2時間30分

*****

ヤノフスキ指揮のN響、素晴らしかった。
丁寧な手堅い演奏ながら、ドイツのオケも顔負けの重厚なハーモニーを奏でていて聴かせてくれた。
特に厚みのある低音のハーモニーが素晴らしい。

コンマスは外国人。
時折、N響に登場するゲストコンマスかしら~?と思ってよく見たら、なんとウィーン・フィルのコンマス、キュッヒルさんだった!
コンマスソロも艶やかでさすがの音色。

外国人歌手も皆、良かった。
特にアルべリヒ役のコニエチュニーさんは、演奏会形式で立ち位置は決まっているけれど、手振り、顔の表情も豊かで大熱演。
アルベリヒだけではなく、ローゲ、ミーメといった悪役歌手が皆、達者でこなれた演技力と歌声で目を見張らされた。

そして更にサプライズが!
本日のお席は、オーケストラ全体が見渡せるよう2階R側の最前列にしてみた。
最終場で何やら近くのドアで出入りがあったような気配が・・・なんて思っていたら、ヤノフスキさんがこちら側を振り向いて大きく合図をしている。ステージ上の歌手もこちらを見上げている。
なんとすぐ近くの左側通路から歌声が・・・エルダ役のクールマンが近くに立って歌っていた!
地底に居るエルダが2階から登場するとは思わなかった。
それもこんな間近で歌ってくれるとは!
高音も低音も素晴らしい深みのある歌声がビンビン響いてきてドキドキさせられた。
おまけに横顔も立ち姿も美しいことこのうえなし。
ステージ上のN響の壮麗なハーモニーにあわせて歌うクールマンはまさに神の歌声のようで目と耳の両方で魅了された。

思いもよらぬ2つのサプライズまであった「ラインの黄金」。
来年の「ワルキューレ」(2015年4月4日(土)と4月7日(火))も今から楽しみです[るんるん]
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